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お題小説 カレイドスコープ

第1章 kaleidoscope

 7

「今も東京に?」
「うん…」
 その茉優の問いかけに、いや、声に、なぜか心がドキドキ…
 と、ときめいてしまう。

 そして想いが、感覚が、感情が、あの頃の…
 あの時代の心の昂ぶりを思い出してきていた。

「会うのは、ううん、顔見るの何年振りかしら?」
「成人式以来だから…
 今38歳だから約18年振りかな?」

「あらやだわ、18年振りなの」
「そう…」
「うわぁでも勇人は変わってないわね…
 わたしなんてもうすっかりオバさんになっちゃってぇ」
 恥ずしそうにそう言ってくる。

 すると…
「そういえばそうかもね、勇人くんはあまり変わってないみたい」
 斎藤弘美が言ってきた。

「そんな事はないさ、もうオジさんだよ」
「ううんだって見た目も、ほら、あのタカシなんかはさぁお腹は出てるし頭は薄いしさ」
 そう続けてくる。

 確かに見た目はそう変わってはいないかもしれないが…
 中身は違う。

 もうすっかりあの事件がきっかけで昔のヤル気、気力を失ってしまい惰性で生きている…

「あ、結婚は?」
 すると茉優は俺の手を、いや、薬指を見ながら問うてきた。

「いや…まだ…」
「そうなんだ…」
「うん…ま、茉優は?」
 訊き返す。

「ほら、ごらんの通りよ」
 すると俺に左手を見せながら微笑んでくる…
 その茉優の薬指には指輪は無かった。

「え?」
 俺はまさか、と、思わず声を漏らすと…

「うふ、うそよ、ウソ、嘘…
 ホントはね、バツイチなの、それも子持ちのね」
 と、少しはにかむ様な笑顔でそう言ってきたのだ。

「バツイチ、子持ち…」
 思わずそう呟くと…

「同じバツイチでもさぁ、茉優の場合はさぁ、旦那サマが亡くなっちゃったバツイチなのよぉ
 つまりは未亡人よ、未亡人、男どもが大好きな響きの未亡人…」
 隣から斎藤弘美がツッコミを入れてきた。

「あ、そ、そうなんだ」

「うん…」

 未亡人か…

 一人なのか…

 だけど、今の俺には関係のない話しだ…
 俺はそんな話しを訊いて感じてしまった少しの昂ぶる想いを隠す、心の奥にしまう意味でも、そんな自虐的な想いを必死に浮かべていく。

 だって…

 この隣に座っている元彼女、いや、青春の全ての甘酸っぱい存在であるこの村上茉優も…

 あの頃の昔とは…

 ほとんど変わっては見えないでいたから…


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