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お題小説 My hero(マイヒーロー)

第1章 My hero(マイヒーロー)

 5

 すると母親が突然…
「なれるわよ、うん、なれるわっ」
 まるで、そんなわたしの心の中の声が聞こえたかの様に言ってきたのだ。

「えっ?」

「ほら、アンタはすぐにそうやって顔に出すからぁ…
 私にはさぁ、何でも分かっちゃうのよね」

 確かにそうかもしれない…
 昔から隠し事は何でも母親にバレてしまっていたから。

「ほらぁ、とりあえずアンタもさぁ、この私の『ヒーロー』を一緒に応援しなさいよっ」

「えっ、あ…」

「ほらいいから、さあ、早くぅ」

「あ、う、うん…」

「あっ、そうそうユニフォームが、お父さんの分のユニフォームがあるからさぁ、ソレを着てさぁ」

「え、あ、う、うん…」
 そう言いながらユニフォームを手渡してくる。

「さあ、一緒にさぁ、彼の大活躍を応援すればさぁ、パァっと明るい気持ちになれるからぁっ」
 そしてわたしもそのユニフォームを着て、テレビの前でそのメジャーリーガーの母親の『ヒーロー』を応援する事にした。

「大丈夫、大丈夫、スカッとするわよ」

「うん」

 なんだかそんな母親の勢いに押され、そして、その明るさ、ポジティブさに感化されたのか…
 少しずつだが気持ちが軽くなってきている様な気がしてきていた。

「ああっ、きゃあぁ、また、打ったわぁ」

 そう母親が歓喜の叫びを上げ…

「うわぁ、きゃあぁぁ」
 気付くとわたしも一緒に歓声の叫びを上げていた。

 その母親の『ヒーロー』の躍動する姿に心が昂ぶり、踊ってくる…

 この時、この瞬間…
 彼はわたしにとっても、ううん、わたしの『マイヒーロー』にもなっていた。

 よしっ、今日から母親を見習って生き方を変えていこう…

 いや、変えられたらいいな…

 その為にもとりあえず彼を…

 この『ヒーロー』を推していこう…

 きっと何かが変わる筈だから…

 いや、変えていきたいから…

 わたしは母親と一緒になって、歓声を上げ、嬌声を叫び、歓喜に心を震わせ、昂ぶらせていく。

 そしてそれと共に、過去の嫌な思い、想いを吐き出していき…

 リセットをし…

 明日へと新たな一歩を歩んでいくのだ。

 そう、わたしの『マイヒーロー』と一緒に…


          Fin〜♪



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