子供(オトリ捜査スピンオフ)
第1章 痴漢行為
女性は、少し間を開けた後、
「先程少し会話を聞いてしまって、だいたいここかなって?」
と女性は少し震えた声で言った。顔を見ると虚ろな目で赤い顔をしている。私は、
「大丈夫ですか?お熱でもあるんじゃないでしょうか?」
と聞くと、女性は、
「あっ!」
という声を漏らした。そして、翔が、
「おねーさん、気持ちいいみたいだよ!だって、ママみたいに濡れてるもん!」
と言った。
女性と私は、顔を見合わせたあと、女性は周りを見渡した。私は、慌てて翔の女性に寄り掛かっている側の手を見ると、スカートの中に入っている。
もしかして、この子…。私は、ほぼ確信した。翔がこの女性に痴漢行為をしていたことを…。私も周りを見渡した後、小さな声で、
「あの…、もしかして…この子…。申し訳ありません。」
と言うと、女性も小さな声で、
「いえ、いいんです…。うぅん…。」
と、話している最中にも女性の声が漏れた。翔はそのまままだ痴漢行為を続けていたのだ。
その時電車の速度が徐々に落ち、歯医者の最寄り駅にゆっくりと到着した。
私は、女性に申し訳ないのと、翔が他人に痴漢行為をしたことに動揺し、
「ほら、降りるわよ!」
と翔に言うと、翔は私に、自分の手を見せた。翔の右手には、ネバネバした液体が絡みついていた。それを見た女性は、
「すみません!」
と言って、ハンカチを出すと翔の手を拭いた。
私は、女性の顔を見てから
「いいえ!こちらこそすみません!気が付かなくて…。」
と言って、頭を下げ翔の手を引いて電車を降りた。
私は、自分が翔の行動に気が付かなかったことを反省し、これからどのように翔に説明すれば良いのか不安になっていた。