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Kalraの怪談

第33章 三十三夜目:首切り服

☆☆☆
あれは、私が10歳のときでした。
私は幼い頃から祖母が大好きでした。しかし、その頃には、祖母はちょっと変になってきていました。今思うと、認知症を発症し始めていたのかもしれません。それでも、祖母は私とよく遊んでくれたので、私は同居していた祖母の部屋をよく訪ねていました。

あの日、祖母がお勝手におやつを取りに行ったとき、私はふと祖母の部屋の押し入れを開けてみたくなりました。他のどこを見ても何も言わない祖母が、決して押し入れの中を見せようとしなかったので、私は以前から押し入れに特段の興味を持っていたのです。

こっそり開けてみたものの、中身は普通の押入れ。入っているのはパッと見ガラクタばかりです。それでも何かあるに違いないと私は奥の奥まで覗き込んでみました。

すると、押し入れの下の段、右の奥に、大きくてきれいな桐の箱がありました。私がそれを引っ張り出して開けると、中には鮮やかな紫地に菊と牡丹の美しい花模様のついた着物が丁寧に収められていました。私はそのあまりの美しさに思わず手に取ろうとしたとき、

「何をしている!!」

祖母が襖を開き、恐ろしい形相で私を睨みつけていました。優しい祖母がそんな大きな声を出すのを聞いたことがありませんでしたので、私はびっくりして手を引っ込め、大きな声で泣いてしまいました。

祖母は私の手をぐいと引き、その着物から引き離そうとしました。その力のあまりの強さに私はなおさら大声で泣きました。

「どうしたの!?」

そこに、母と、たまたま遊びに来ていた伯母が来ました。伯母は母の姉です。祖母が私の腕を引いているのを見て、びっくりしたのか、母は祖母を止めました。そして、伯母は出ていた着物を見て、

「あら!素敵な着物じゃない」
と手にとったのです。
「あ・・あ・・!」
祖母は、着物を手にした伯母を見て、目を大きく見開いて震えています。
「なんてこと・・・なんてことを・・・」
言いながら、力なく、祖母は私の手を離しました。
「その着物は・・・その着物は・・・首切り服だ!」

祖母は一声叫ぶと、ガクガクと震えながら気を失ってしまいました。私は恐ろしくなり母にしがみつき、伯母は慌てて救急車を呼びました。祖母はそのまま病院に運び込まれました。
そして病院で、祖母は伯母や母にうわ言のように以下の話をしたそうです。

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