
Kalraの怪談
第62章 新・六十ニ夜目:彼女の思い出
【彼女の思い出】
彼女が東京から引越してきたのは小学校2年生のときでした。こんな田舎になんで?と思ったのを良く覚えています。
彼女はあまりクラスのみんなと話しませんでしたが、ボクは彼女のことをよく目で追っていました。一目惚れしていたのです。
そして、何か月かして、ひょんなことから、彼女が海辺の崖の上に建っているホテルの廃墟に入りびたっていることを知りました。彼女はいつもその屋上で膝を抱えて水平線に沈む太陽を見ていました。
いつしかボクと彼女は、そこで色々な話をするようになりました。
彼女はずっと虐待を受けていること。
家に帰りたくないから、できるだけ外にいること。
ここから見える「たいはく」という星に願いをかけているのだということ。
ある日、下校の時間、彼女がボクにそっと言いました。
「たいはくがメッセージをくれたよ」
よほど嬉しかったのか、その目はまるで三日月のように細くなっていました。
家に帰った後もボクは、胸騒ぎに耐えきれず、ボクはあのホテルに駆け出していました。
ホテルに着くと、小さい影が丁度入り口に吸い込まれるところでした。慌てて追いかけるボク。
屋上の扉を開ける音。パシャンと水が跳ねる音。
その音を聞いてすぐに屋上に飛び込んだはずなのに、彼女はいませんでした。
ただ、残照に照らされた足跡が一筋、前日の雨でできた水たまりから伸びているだけでした。
そして、彼女は消えてしまいました。
ボクの証言を元に、例のホテルを中心に捜索されましたが、ついに見つからなかったのです。
半年後、だいぶ離れたところで、子どもの死体が発見されました。警察は、その遺体をホテルの屋上から海へと投身自殺を図った彼女であると断定しました。
でも、ボクは見たんです。あの日、彼女の足跡は、屋上の真ん中で消えていたのです。
だから、ボクは信じています。
きっと彼女は「たいはく」にいるんだと。そこで笑って暮らしているんだと。
彼女が東京から引越してきたのは小学校2年生のときでした。こんな田舎になんで?と思ったのを良く覚えています。
彼女はあまりクラスのみんなと話しませんでしたが、ボクは彼女のことをよく目で追っていました。一目惚れしていたのです。
そして、何か月かして、ひょんなことから、彼女が海辺の崖の上に建っているホテルの廃墟に入りびたっていることを知りました。彼女はいつもその屋上で膝を抱えて水平線に沈む太陽を見ていました。
いつしかボクと彼女は、そこで色々な話をするようになりました。
彼女はずっと虐待を受けていること。
家に帰りたくないから、できるだけ外にいること。
ここから見える「たいはく」という星に願いをかけているのだということ。
ある日、下校の時間、彼女がボクにそっと言いました。
「たいはくがメッセージをくれたよ」
よほど嬉しかったのか、その目はまるで三日月のように細くなっていました。
家に帰った後もボクは、胸騒ぎに耐えきれず、ボクはあのホテルに駆け出していました。
ホテルに着くと、小さい影が丁度入り口に吸い込まれるところでした。慌てて追いかけるボク。
屋上の扉を開ける音。パシャンと水が跳ねる音。
その音を聞いてすぐに屋上に飛び込んだはずなのに、彼女はいませんでした。
ただ、残照に照らされた足跡が一筋、前日の雨でできた水たまりから伸びているだけでした。
そして、彼女は消えてしまいました。
ボクの証言を元に、例のホテルを中心に捜索されましたが、ついに見つからなかったのです。
半年後、だいぶ離れたところで、子どもの死体が発見されました。警察は、その遺体をホテルの屋上から海へと投身自殺を図った彼女であると断定しました。
でも、ボクは見たんです。あの日、彼女の足跡は、屋上の真ん中で消えていたのです。
だから、ボクは信じています。
きっと彼女は「たいはく」にいるんだと。そこで笑って暮らしているんだと。
