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Kalraの怪談

第52章 五十二夜目:かか切りの竹

☆☆☆☆
あれは、数年前の3月のことです。
私は、友人のA子とカフェで話しをしていました。
T子さんはフリーのライターで、色々な分野に手を出していたのですが、一番好きだったのは、怪奇譚や都市伝説などでした。その関係のムックなどの著書も数冊書いていたので、ライターとしての収入もそこそこあったと思います。
私も怪奇譚が好きですので、A子とは気が合い、数カ月に一度くらいはこうして会って話しをすることがありました。

この日のA子は『大きい仕事が取れた』ということで非常にウキウキとしていました。どうやらオカルト雑誌のワンコーナーを任されることになったようです。毎月、一つずつ、怪奇譚を掲載するというもの。取材費用や調査費も出るし、原稿料も良いとのことでした。

「早速来月に第一回の記事を出すんだけど、最初だからインパクトがあるやつがいいと思うのよね」

どんな記事を書くの?
私が尋ねると、

「うーん、『女の人が聞くと死ぬ話』っていう都市伝説があって、それについて書こうかなと思っている」

私は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
だって、あなただって女性でしょ?

「正真正銘、生まれたときから100%女性よ。」

まあ、大丈夫でしょう、と言って、彼女は笑った。身なりに余り気を使わないが、こうして笑うと、元の顔立ちが整っているので、とても魅力的だった。くりくりと良く動く目は好奇心と愛嬌に満ちている。きっと、この顔立ちもA子が取材をするうえで役に立つんだろうな、などと考えてみる。
A子が語るところによると、その「女の人が聞くと死ぬ話」というのはこんな話らしい。

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