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Kalraの怪談

第12章 十二夜目:足跡を追うな

☆☆☆
その話を聞いたのは、数日前に亡くなったじいちゃんの葬式の帰り道だった。
俺のじいちゃんは迷信深い人で、朝晩仏壇に向かって念仏を唱えるような人だった。
その甲斐あってか、89歳まで生き、大往生を遂げた。

親父は式の帰り道、珍しく俺を誘って飲み屋に入った。
そこで、こんな話を藪から棒にし始めたのだった。

「あれは俺がまだ、小学生のときだった
 友達と山で遊んでいたとき 地面に妙な足跡を見つけたんだ」

親父は日本酒の杯を傾けながら話し始めた。

「山犬にしては大きい、熊にしては小さい。
  何より、3つ足で歩いているようだったのが妙だった。
 うさぎのように跳ねる動物ならわかるが、
 こんなに大きな足跡の動物がはね歩いているとは考えにくい。
 幼かった俺は、その足跡を追っかけてみることにした。
 父ちゃん・・・お前のじいちゃんだな・・・には、
 『山で妙な足跡を追うな』と散々言われてはいたんだが、
 その時は迷信だろう、くらいにしか思っていなかったんだ」

「その足跡は途切れずに山の奥へと進んでいった。
 俺は友達と二人でずんずんとその足跡を追いかけていった。
 ところが、あるところで、ふと、木々が途絶え、広くなった場所に出た。
 その場所で足跡はぷっつりと途切れていたんだ」

「何だ、と思って、来た道を戻ろうとしたとき、
 俺達は、帰り道が全くわからないことに気づいた。
 知らない山鳥の鳴き声、突然の風のざわめき、
 唐突にいろんな音が聞こえ始めた。
 俺達は怖くなって、その奇妙な広間の真ん中で辺りをうかがっていた。
 ガサガサ・・・
 と灌木が揺れて、のそりと、そいつは出てきた」

「そいつって?」

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