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Kalraの怪談

第17章 十七夜目:コインロッカー

<ロッカー管理会社のアルバイトの話>
コインロッカーに荷物をずっと預けているとどうなるか知っているか?
大抵の運営会社は定期的にチェックをして、ロッカーが長期に渡って開けられた形跡がないと「放置」とみなして、中身を取り出して移管してしまうのだ。

僕は、大学生時代にその「移管」のバイトをしたことがある。

S駅の南口コインロッカーは人目につきにくく、利用しにくいからか、そんなに一杯になるものでもなかった。
しかも、そのロッカーは旧式で、作業員が目視で利用状況を確認する必要があった。
料金の回収と一緒にロッカーの利用状況を確認し、数日に渡って、同じロッカーが使用中であれば中身を確かめる必要があった。

ちょっと人通りから外れた深夜のコインロッカーは、なんだか嫌な気配がするのだが、バイトを続けるうちにそんな雰囲気にも慣れていった。

実は置き忘れというのはそれほどある訳ではなく、自分も2ヶ月このバイトしているが、まだ一件も置き忘れを移管した経験がなかった。

ところが、ついに、3日間滞留しているロッカーがあったのだ。なんとなく嫌な予感はしていた。

先輩からは、「滞留のロッカーを開けたら、中から嬰児の腐乱した遺体が出てきた奴がいる」だの、「バラバラ殺人の被害者の頭が入っていて、開けた瞬間に目があった」だの、恐ろしい話をいくつか聞いていたからかもしれない。

そうは言っても規則なので仕方がない。僕はロッカーを開けてみることにした。
ロッカーを開けてみて僕はゾクリとした。

中には紙で何重にも封をされた古びた壺が一つあった。それだけならまだしも、ロッカーの内壁に、奇妙な文字が書かれたいわゆる「御札」のようなものがベタベタと貼られていたのだった。

怖くなり、先輩に電話で相談をした。その結果、「規則には違反するが、もう一日だけ様子を見よう」ということになった。

次の日、恐る恐る南口コインロッカーを見に行くと、件のコインロッカーは「空」、つまり、中身が取り出されていたのだった。念のため、中を覗くと、昨日貼り付けられていた御札のようなものも、きれいに剥がされていて、何の痕跡もなかった。

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