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バニーガールホール
第16章 そらとぶうさぎ
『そうですね……本当に…
今夜は…静かで…あの夜みたい…』
そう言いながらユイは…
モヒートを…2杯…用意すると
そのグラスを持って
カウンタ―からこっちに出て来て。
俺の横の席に座った。
『じゃ…乾杯…』
モヒート…のカクテル言葉は、
ー 心の渇きを…癒して… ー
心が…ひび割れる程に乾いて
乾ききって…癒されたいと…願ってるのは…。
俺の方なのか…それとも…、
俺の隣で…モヒートを飲んでいる
ユイの方…なのか……。
「ユイ……」
『はい…、何でしょうか…?』
その後の言葉を…
紡ぐよりも先に…
俺の方に…視線を向けた
ユイの唇に俺の唇を重ねた…。
俺からのキスを…ユイは
何も言わずにそのまま受け入れて…。
お互いの舌に舌を絡め合うと…
唾液とモヒートの味が僅かに混じる。
爽やかな…ミントの香りのするキスを…
その夜は…ユイと…何度も交わした。
モヒートを…俺とユイが…
飲み終えるのに…大分時間を使っていて。
今夜は…モヒートで酔ったのか…、
ユイと交わしたキスに酔っちまったのか
どっちに酔ったのかもわからないまま。
俺は…ユイに見送られて、
ラビットホールを後にした…。
降っていた雨は…いつの間にか
知らずの内に止んでいた…みたいで。
アスファルトのくぼみに出来た
水溜まりに夜の街のネオンが
映っていた…、俺は…水溜まりに
気付かずに…足を踏み入れていて。
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