
悪いオンナ…3
第1章 【癒しの彼女には両想いの彼氏が居て……】
途中で連れに連絡して後で合流するからって伝える
僕にその気がない事をわかってもらえたはずだ
「此処だから」と泊まっているホテルに着いた
「うん、じゃあ……戻るね」
真っ直ぐ見られて「ありがと」ってもう一度言われた
そうだ、これで終わるんだ
ただ再会しただけ
何も変わらない日々を明日からまた繰り返すんだ
「先に入って?」
僕の気が変わらないうちに早く……
ふふん…て笑わないでよ
「じゃあバイバイ」と背を向けたキミに
「元気で!」って声が出ちゃうのはなんでだろう
再び振り向いたキミは戻って来ちゃうの
「手、出して」
少し腕を捲られてアイライナーで書かれた数字
部屋番号だってすぐにわかった
「覚悟出来たら……ね?」
それだけ言って本当に行ってしまった
引き際も全部、敵わなかった事を思い出す
僕だけ、あの頃と変わらないままじゃないだろうか……
ちゃんと置いてきたつもりなのに……
立ち直ったつもりだったのに……
グッと奥歯を噛み締めて踵を返した
そうだよ、誰か褒めてくれ
もうあんな想いはたくさんなんだ
此処で戻ったら、また同じ繰り返しだろ?
何回彼女に振り回されるんだよ
良い加減学べよって………
あれから誰か抱いたか…?
いや、抱けなかった
良いところまでいくのに僕から拒絶してしまう
重症だろ………
どうやって辿り着いて、連れと居たのか
記憶が抜け落ちていく
笑えてたのかどうかもわからない
「よし!もう一軒行こう!」って盛り上がっている
グループから徐々に離れて足が止まる
「ごめん……帰る」
腕に書かれた数字が消えてなくなる前に……
いや、もう覚えてる
忘れるはずがないだろ
ずっとずっとずっと、彼女の顔が消えてなくならないんだよ
