テキストサイズ

微熱に疼く慕情

第5章 【陶酔させてく純情】








「田中さん、すみません、先ほど提出して頂いた書類なんですけど不備があって…」



決算月にこれは勘弁して欲しいなぁ…と思いつつ
今日もポーカーフェイスで作業をこなす
営業部に足を運ぶのは今週だけで3回目
忙しいのはわかるけど、期日は守られないわ、
不備だらけだわって皺寄せが酷い
営業部長に伝えても改善ないしなぁ……



「え、どこっすか?」



最近入った人だから仕方ないとしても、
他部署への話し方も気になるところ
若いから許されるものでもない
隣に立って説明するも「へぇ〜そうなんすね」って軽い
襟足も長い、茶髪、田舎のホストみたい
わかりやすいように説明してるつもりだけど
「聞いてます?」と思わず注意したくなるほど聞いてない気がする



「あ、眼鏡に何か着いてますよ」


「え…?」



外して確認し、ハンカチで取る



「あ〜やっぱり!橘さんって、眼鏡外すと超絶美人っすね!勿体ない、コンタクトにしたらどうですか?」



部署内に響き渡るような声量……本当に迷惑
サッと掛け直して説明に戻る
「うわ、ガン無視だ、ウケる」って聞き流そう
去り際に「ネクタイ曲がってますよ」と捨て台詞置いて御暇した
2ヶ月前に中途採用されて、もうすでに契約取ってきたりと実力はあるみたいだけど苦手なタイプ…



「大丈夫だった?」って先輩に見られてました
たまたま通り掛かったらしいけどめちゃくちゃ塩対応なの見られてて動揺しちゃう
誰も居ないの確認して、頭を撫でられた



「対応は間違ってない、引き続きああいう対応で宜しく……その、一華が笑うとコロッといっちゃいそうだからさ」



エレベーターのボタンを押して2人で乗り込む
誰も居なかったから先輩だけに見せる顔をする



「会社ですよ、先輩……名前呼びはダメ」









ストーリーメニュー

TOPTOPへ