微熱に疼く慕情
第1章 【渇いた心】
「絡めないと終わってくれそうになかったから」
驚いてる…?
こんな事、言えるようになった私を
クルッと回転させられ向かい合わせになった
またこんな至近距離で見つめ合うの…?
メイクは落としてないけど、もうルームウェアだし
何ならキャミの上に羽織っただけのパーカーとショートパンツだしね
「ねぇ、もうこんなの終わりだよ、別れたんだし」
「ちゃんと目を見て言って?」
声のトーンでわかる……きっと真剣な顔してる
ゆっくり目を合わせたらちゃんと言うの
珈琲飲んだら服も乾いてるだろうから帰ってって……
まだ雨降っててもタクシー呼んだら良いよって……
「俺は一華に今日会った瞬間にもう逃したくないって思った……再会出来たのも縁じゃね?」
「んふ、どの口が言うの?別れた原因、忘れた?もうあの時点で気持ち吹っ切れてるから、さっきのは事故でしょ?」
「そうなの?俺は、結構本気でしたつもりだけど」
何なの、そのキョトンとした顔……
視線だけで心の距離詰めないで
「ちょ、近いよ…」
「ダメなの?」
「珈琲淹れるから」
「要らない」
「…そうなの?」
「今は、一華もらうよ」
「は?…っ」
顔上げた瞬間、重なる唇……ズルい
抵抗する手も優しく握って指を絡めてくる
顔を引いてもすぐ捕まる
キッチン台の上に座らされて
「あれ、一華痩せた?前より軽いじゃん」って
何年前の私よ
サイドの髪を後ろに払って頬に手を添える
相変わらず、持っていき方が秀逸だね……
抵抗していた手は、大智の方から首に回させた
「まだ足りないだろ?」
「……バカ」
あぁ……許してしまった
もう戻せない
せっかく線引きしたのも水の泡……
ムカつくけど首に回った手で大智を引き寄せてしまう
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える