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微熱に疼く慕情
第2章 【動き出す熱情】
「最寄り駅に着いたら電話してもらっても良い?心配だから…」
「わかりました」
「夜道危ないから改札出る前にコールして?」
「ふふ、心配し過ぎですよ、お父さんみたい」
「だって心配だよ、可愛いから、橘さん…」
「……そうだ、会社ではあまり攻めて来ないでくださいね?この前の、エレベーターのやつ、あれはアウトです」
「え?ちょっと喋っただけじゃん」
「耳打ちしないでくださいよ、コソコソするのも他の人に見られたら噂になって仕事がし辛くなるじゃないですか」
「うーん、普通に話し掛けるのはOK?」
「はい、あくまで適度な距離感と適度な関係性で」
「難しいなぁ…わかった、ちゃんと守る」
「山岸さん知らないんですか?山岸さんってかなり人気高いんですよ?私が仲良くしてたら目の敵にされちゃいます、眼鏡外しただけであざといって言われちゃうんですから」
男には理解出来ない女の世界があるんです
俺が守ってやるよって?
だったら何もしてくれない事が一番です
勝手に俺の彼女呼ばわりされるのが一番迷惑なの
女に目をつけられる事がどれだけ仕事に支障をきたすか
だから社内恋愛は向いてないっての
渋々納得してくれたけど
「何かあれば必ず相談して?」ってあなたのこれからの行動次第ですよ
あ・な・た・の!!
笑顔でお礼を言って、後ろ髪を引かれるようなフリをしながらバイバイする
ちゃんと約束は守って、言われた通りに駅に着いたらコールする
他愛もない話を延々としてくれて無事に家に辿り着きました
そう、駅からは徒歩5分ほどなのですぐに着いちゃうんですよ
「早く家まで送れるように頑張ります…」
「ふふふ、家まで送って、そのまま帰っちゃうんですか?」
「え?え、あ……えっ!?」
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