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HEAVEN~時を超えて~

第3章 錯乱

『ハァ…ハァ……ハァっ』

ボックスじゃなくて
ポールと本体だけがぽつんと置いてある公衆電話

小さい透明の扉を開けて受話器を取る


『ぇと…えぇと…』

正直ほとんど使った事がない
でも…電話でしょ?なんとでも使えるはず

汗だくになって震える手で番号のボタンとにらめっこする



『ぁ・・・』


膝から崩れそうになった


あたし…お金持ってない



ガラン…

受話器と一緒に地面に落ちるように座り込んだ


『ハァ…ハァ…・・・』


もう動けない…

なんだ…糠喜びさせて、ひどい…あんまりだよ


電話機に両手をかけてうなだれた


泣く気力も…目から出る水分も残ってない
そんな風にへたり込んだ





カチ…ッ…





『・・・?』




横目に…あたしの顔の前を
スラリとした長い指が通過して
電話機の赤いボタンを押した…ように見えた


なに?





『〃ここ〃を押せば良いんだよ』




え……




囁くような・・・穏やかで綺麗な声が
あたしの耳元を通過する






『クスクスクス・・・あ、そっか知らないのか』









『・・・?』





頭が、体が…ついていかない





『現代人は…公衆電話の使い方も忘れちゃうって聞くもんね』





幻聴…とかかな





『わからないでもないけどね。ほら、ここだよ?

ここを押すと〃緊急時〃はかけられるんだよ』





声の方向に目を向けるのに…ウソのように時間がかかる





『あ、君の場合は…忘れちゃうって言うよりも

世代的に使った事がない、って方が正しいのかな?』





そんな…バカな






『ね?・・・マコト』




ニコリ…




やっと顔を上げて振り向く先には
最近じゃすっかり見慣れた…笑顔が、、あたしを見下ろしていた


顔の半分に…真っ赤な血を流したまま






『っ…っ…キャァ゛ァァ゛ぁぁっ・・・』

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