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HEAVEN~時を超えて~

第3章 錯乱

バサササッ…

緑の大地の真ん中…あたしの悲鳴で鳥が一斉に飛び立つ




心臓が止まった…本気でそう思った




『ほらほら…だから落ち着いてって
いつも言ってるじゃないかマコト』



声の主は、あたしの目の前にしゃがんで
ダラッっと崩れるあたしの体を支えて受話器を取る



『いい?マコト、ここをこうだよ』



世界一…親切丁寧指導のように
わざわざ受話器を一度戻して
緊急通報の赤いボタンを押す様子を見せては
受話器をあたしの耳に当てて言う



『覚えた?…ふふふっ
ほら、あとは番号を押すだけだよ』



『ぁ…・・・ぁ…』



『ほら・・・はやくかけないと』




あたしの体は窒息しそうになりながら
声が出ない代わりに
水分が枯れたと思っていた目から涙が出ていた



『マコト…転んだの?あぁ、こんなに…足も
傷だらけじゃないか。

裸足で外を走るなんて無茶するなあ
慌てちゃダメって言ってるでしょ

・・・。
電話しないの?…あれだけ望んでいたのに』




『ぁ…あ・・・』




『そう。それじゃ用は済んだね?
さぁ・・・うちに帰ろう』




いやだ…あそこはあたしのうちなんかじゃない


手が…足が…言葉が…ひとつも出ない



あっさりと肩に担ぎ上げられても抵抗する力も…体力も使い果たしてしまった後で

腑抜けのような体を無造作に運ばれているような景色





『ぅ…っ…っ…ァウっ…ううぅ…っ…』

言葉の代わりに涙と嗚咽が漏れる



『♪〜♪〜…』


何事もないように…森林浴でもしてるように口笛を吹いてるその人

その背中にぶら下げられて
あたしは全力で走ってきた道を連れ戻される



『ぃや・・・ゃだ……』


『クスクス…車叩き壊してもドア開かないでしょ?
車によってはセキュリティ作動で一発で御縄だよ
おドジさんだねマコトは』


『ぅ…・・・ゃ…メテ』



『良い天気だね、マコト』

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