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小さい王さま

第8章 8・王さまとして

 動物たちは精霊王をほうむり、それから月の花を泉のそばに植えました。

 それらが終わってから、熊が言いました。

「悲しくて、何もしたくないよ」

 しかしそれとは別の意見を熊が言いました。

「僕は飯を食いたい。悲しみに勝つために」

 虎が熊をにらみます。熊も虎をにらみ返します。その二頭を見て、猿が鼠にききました。

「どうしますか、王さま」

 動物たちがいっせいに鼠を見ました。

 鼠はすぐに返事をすることができませんでした。鼠は王さまです。みんなが従ってくれるかわりに、鼠はみんなが幸せになることを考えなくてはなりません。

 鼠はじっくり考えたすえに、王さまとしてはじめての決断をくだしました。

「まずは食べよう。お腹が減っていては弱ってしまうからね。その後で休もう。お腹がいっぱいになればゆっくり悲しむこともできるからね。どうかな、みんな」

 反対する動物たちはいません。

「じゃあ、みんな、食料をしまってある洞窟に行こう」

 鼠が先頭に立って歩き出しました。

「みんな王さまに続こう」

 熊が言いました。

「そうだ、俺たちの王さまに続こう」

 虎も言いました。

 鼠のあとに、動物たちの長い行列が続きました。

おしまい
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