アシスタントで来ただけなのに…!
第1章 鬼才漫画家、市川ルイ
__数年後
「加奈子!郵便に入ってたわよ!」
まだ早朝、カーテンも開いてない部屋で母の声が響く。
眠い目をこすって体を起き上がらせて、声を上げる母を見る。
おはようと呑気に挨拶をしようとしたが、母の手元にある茶封筒に目がいった。
「ん?それはなに?」
「何じゃないわよ!ほら!これ!」
仕事着姿の母が切手の貼られた茶封筒を差し出す。
「んっとこれは…っは!」
茶封筒の宛名にはデジタル文字で『須藤加奈子様』と書かれていた。
右下には先日応募した求人サイトの名前があった。
「こ、れは…まさか履歴書?」
寝起きの回らない頭がハッと目覚めて起き上がった。
「中身は…!中身は…!?」
母親の声が響く中、丁寧に糊付けされた茶封筒をビリビリと破り、ベッドの上に中に入った紙を全て広げた。
中から出てきたのは二枚の紙。
「まさか、落ちた…?」
ふと頭によぎったのは、私が頭をひねらせて書いた履歴書ともう一枚はお詫びの書面。
三つ折りにされた紙を一枚手に取り広げた。
「落ち着け…落ち着け…」
恐る恐る紙を広げると驚いた。
その紙は履歴書でも書面でもなく、地図だった。
「…え?」
「ちょっと加奈子!ぼけーとしないで!なんなの!?」
母親は急かす様に寝起きの私の肩を揺さぶった。
「えっと…えっとね、これは地図みたい」
「はぁ?地図ですって?」
眉に皺を寄せた母に見下ろされながら、もう一枚の紙を手に取る。
「えーと、『この度は当サイトへ応募ありがとうございます。結果をご報告させて頂きます。』」
「…合格ですって!加奈子!」
声を張り上げた母の言葉を聞いて大きくガッツポーズをした。
「やった…やった!良かった!本当に良かった!」
勢い余って母に抱きつこうとすると、母が書面に目をギラつかせた。
「ちょっと待ちなさい。これ、おかしいわ」
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