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『春の雪』

第1章 春の雪

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 朝、カーテンを開けると、春の雪が舞っていた。

「あら、やっぱり雪だわ……」
 そう呟くと…
「ええっ、本当だぁっ」
 息子の慧が嬉しそうな声を上げてくる。

「あぁ、もう、せっかくの入学式なのに…
 これじゃぁ、スーツが濡れちゃうわぁ……」

「雪だるま作れるかなぁ…」
 今年から小学生になる息子には、そんな、大人の事情などは関係ないみたい。
 
 その雪は、朝の光にきらきらと煌めき、淡く舞っていた…

「ママぁ、雪がキレイだねぇ、まるで桜みたい…」

「あ、うん…そうね」

 その緩やかな風に舞い降っている白い雪は、まるで、風に吹かれ散る桜の花びらのよう……

「ほら、早く準備しないとぉ…」
 だが今日は、待ちに待った小学校の入学式である…

「ほら、早く顔洗ってきなさい」

「はぁい…」

 そう返事をし、小走りしながら洗面所へ向かって行く息子の後ろ姿を見ながら、ふと…
 この数年間の、シングルマザーとしての生活を思い浮かべてしまう。

 いいこともあれば、辛いことも、いや、どちらかといえば辛い時間が殆どといえた…
 本当に、心穏やかに生活できるようになったのは、ほんの2年ほど前くらい。

「さぁ、早く着替えてぇ」
 だが、今朝の息子の、この明るい笑顔を見ると、そんな思いもスッと消え…
 新しい生活の始まりの期待に心が昂ぶってくる。


「ねぇ、雪、積もるかなぁ?」

「え、春の雪だから、積もらないわよ」

 そう、春の雪は積もらない…
 淡く湿り、大地に溶けて消えていく…

 それは、過去の思いを消すように………
 


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