『春のうつろい』
第9章 春爛漫(はるらんまん)
1
「残業お疲れさま…」
後ろから課長がそう声を掛けてきて…
周りに見えない様に、わたしの机に、いつもの黄色の付箋を置いてきた。
「ありがとうございます…」
わたしはさりげなくそう応え、こっそりその付箋を見る。
『○○H2511』
それは…
『○○ホテルの2511号室』
という逢瀬の意味。
メールでもなく…
LINEでもなく…
小さな付箋にての、敢えて二人の連絡用のアナログツール。
そしてそれは、二週間振りの逢瀬の誘い…
いつものわたし達は、週一回のペースで逢っていた。
週一回…
それは、彼、課長の個人的な、いや、一方的な理由から。
だが、月に一度、オンナのわたしには、休憩を取らなくてはならない一週間という時間が起きる…
だから、必然的に月に三日、月またぎで四日、そんな逢瀬のペースであった。
だから今夜は、そんなオンナの休憩明けからの誘い…
そして…
あの夜から、二週間振りの秘密の誘い。
そう、あの夜から……
あの土日休み明けの月曜日の昼前に、わたしと課長は偶然エレベーターで遭遇した。
周りで誰が見ているかわからないから…
だからわたし達は、会社内では、仕事上以外では、ほとんど会話を交わさない。
そして、そのエレベーターでも他の社員が同乗していたので、一瞬のお辞儀と目配せのみではあったのだが…
彼は…
横並びの彼は、スッと左手を上げ、チラとわたしを見てきたのだ。
それは、つまり…
左手薬指にあるはずのモノを意味し…
『知らないか?』
と、目で問うてきた。
指輪を知らないか?………
「……………」
わたしは黙って小さく首を振る。
「残業お疲れさま…」
後ろから課長がそう声を掛けてきて…
周りに見えない様に、わたしの机に、いつもの黄色の付箋を置いてきた。
「ありがとうございます…」
わたしはさりげなくそう応え、こっそりその付箋を見る。
『○○H2511』
それは…
『○○ホテルの2511号室』
という逢瀬の意味。
メールでもなく…
LINEでもなく…
小さな付箋にての、敢えて二人の連絡用のアナログツール。
そしてそれは、二週間振りの逢瀬の誘い…
いつものわたし達は、週一回のペースで逢っていた。
週一回…
それは、彼、課長の個人的な、いや、一方的な理由から。
だが、月に一度、オンナのわたしには、休憩を取らなくてはならない一週間という時間が起きる…
だから、必然的に月に三日、月またぎで四日、そんな逢瀬のペースであった。
だから今夜は、そんなオンナの休憩明けからの誘い…
そして…
あの夜から、二週間振りの秘密の誘い。
そう、あの夜から……
あの土日休み明けの月曜日の昼前に、わたしと課長は偶然エレベーターで遭遇した。
周りで誰が見ているかわからないから…
だからわたし達は、会社内では、仕事上以外では、ほとんど会話を交わさない。
そして、そのエレベーターでも他の社員が同乗していたので、一瞬のお辞儀と目配せのみではあったのだが…
彼は…
横並びの彼は、スッと左手を上げ、チラとわたしを見てきたのだ。
それは、つまり…
左手薬指にあるはずのモノを意味し…
『知らないか?』
と、目で問うてきた。
指輪を知らないか?………
「……………」
わたしは黙って小さく首を振る。
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