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SAKURA (さくら)

第1章 しだれ桜


 しだれ桜の枝は、風に触れるたびにやわらかく揺れていた。

「きれい……」

 それは、誰に向けたものでもない呟き。

 満ち足りた日常の底に、わずかな揺らぎだけが沈んでいる。

 花は、ただ揺れている。  

 触れれば崩れてしまいそうなかたちで――


 風吹けば
 ほどけて揺れる
 花のごと
 瞳の奥が
 乱れて濡るる



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