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SAKURA (さくら)

第8章 五月 皐月めい

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 わたしが専務の秘書を受けたのは…
 恨み、怨みなんかのドロドロとした想いなんかじゃなく…
 単なる…
 仕返しに、過ぎないのだから。

 そう…
 それは、本部長に昇進する際に捨てられた仕返し…

 そして…
 わたしから、あんな若い子に乗り換えた、仕返し――

 わたしは、統括部長に昇進した時から彼に仕え…
 わたしなりに一生懸命に支え…
 尽くし…
 カバーしてきたつもりであった。

 そして、彼の成績の向上と、成功を一緒に歩んできたつもりでもあった…
 ううん、それには、間違いはない。

 そして…
 表とウラの両方の面でも支えてきた自負があった…
 いや…
 いつの間にかに、彼を愛してしまっていた。

 彼の成功は、わたしの幸せであり…
 喜びでもあり…
 昂ぶりでもあった。

 そして…
 いつしか彼は、奥様との距離も離れ…
 いや、それは、仕事の成功の反動ともいえる。

 だから、わたしは、それも懸命に支えてきたつもりであり…
 愛されてもいると、自負していたのに――

 本部長昇進と共に…

 あっさりと、切られてしまった―――

 でも、それは、きっと…

 彼の、この先の将来を、見据える為に仕方がないことなんだ…

 わたしは、一時期でも、彼の駆け上がる人生に尽くせられただけでも幸せなんだ…

 それに、わたしは、彼と比べたら、まだまだ若い…

 新しく、やり直せれば…

 ううん…

 きっと、彼も、新しくやり直せって意味で、わたしを―――と、思っていた。

 それに、本部長就任と共に、男性秘書に変えたから…
 そうに、違いない…
 彼の優しさなんだ……
 と、思って、いや、信じていたのだ。

 だが…

 就任早々に…

 わたしより、若い、あの女社員の企画を採用し…

 同行営業を…

 それも、秘密裏に、一泊した――

 わたしは、それを知った時に…

『お世話になります…』

 声をかけられ、誘われていた専務に…
 つまり、彼の直属の上司に当たる専務に、彼同様に秘書となり…
 お世話になる事を決めたのだ。

 ただ、その時点では…
 いや…
 たった今までは…
 本当に、軽い仕返しの…
 イタズラに近い、嫌みのつもりでいたのだけど…

 この今の、彼の目を、見た瞬間に…

 想いは、変わった―――
 


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