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今宵だけは~秘められた人妻との密会

第11章 結び目(8)

耳元で響く甲高い絶叫が、やがて掠れた吐息へと変わり、有香の身体から力が抜けていく。激しく波打っていた背中がゆっくりと沈み、あれほど室内に鳴り響いていたスパンキングの乾いた音も、今はもう聞こえない。

訪れたのは、耳が痛くなるほどの濃密な静寂だった。
絡み合っていた二人の身体が離れると、密着していた部分から夜気が入り込み、汗ばんだ肌を冷やしていく。有香のヴァギナからは、白く泡立った愛液と僕の痕跡が、とろりと重力に従って溢れ出した。それは、彼女が日常を裏切り、一匹の牝として貪り尽くされた動かぬ証拠だった。

「はぁ……っ、はぁ……っ……」

有香の呼吸が次第に整い始める。先ほどまで快楽で虚ろだった彼女の瞳に、少しずつ理性の光が戻ってくる。真っ赤に上気していた耳元の火照りが引いていくにつれ、彼女は自分の置かれた状況を、そして自分が犯した背徳の重さを、改めて自覚していくようだった。

彼女は力なく横たわったまま、赤く腫れ上がった自分の太ももや、散乱した衣服をぼんやりと見つめている。

「……かずくん」

ポツリと漏らした声は、先ほどの情熱的な喘ぎ声とは別人のように静かで、どこか悲しげだった。

「……私、また、とんでもないことをしちゃったわね」

彼女の視線が、部屋の隅に置かれた自分のバッグ、その中に仕舞われた夫からの連絡を待つスマートフォンへと向けられる。 「主人とは違う」と言い切り、自ら腰を振って快楽を求めた自分。その「女」としての本能と、「妻」としての倫理の狭間で、彼女の表情は複雑に歪んでいった。

我に返った彼女が最初にしたのは、乱れた髪を整え、真っ赤に染まったお尻を隠すようにシーツをたぐり寄せることだった。その仕草は、僕という異物を排除し、再び貞淑な妻の仮面を被り直そうとする、痛々しいまでの抵抗に見えた。

しかし、子宮の奥に深く刻み込まれた激しい疼きの余韻だけは、彼女がどれほど否定しようとも、その身体に色濃く残り続けていた。

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