陽が沈む湊、陽が昇る湊。
第8章 すれ違いの日々
「で、僕に構って欲しくて連絡してきたわけだ」
「……」
「僕は暇じゃないんだ」
凱の声は子どもを叱る親のようだった。
「……分かった。切るよ」
「ちょっと待って」
そういうと、保留音が流れはじめた。ややあって
「時間ができたから、構ってあげる。場所送るからそこで待ってて」
電話が一方的に切れた。スマホを確認する。
オレは指定された場所に車を走らせた。
パーキングに駐車して、指定されたラウンジに向かう。
「いらっしゃいませ」
渋いギャルソンに案内されて、街が一望できる窓際の席で凱を待つ。
メニューを開いて眺める。
ブレンドコーヒー1,500円。
冗談だろ。思わずメニューを二度見した。
オレは改めて店内を見回していた。
すると、スタイリッシュな出立ちの長身男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「……やれやれ、君たちは一人で過ごせない人種なんだね」
「なんの話だ」
「一昨日も日陽の相手をしたんだ」
「そうなのか」
そういえば、その日は日陽の公休だったな。
向かいのソファに腰をかけた凱にも疲れが顔に滲んでいた。
アタッシュケースからノートPCを取り出してテーブルに置いた。
さっきのギャルソンが注文を聞きにやってくる。
「僕はブレンドと、あとこれね」
凱が注文したのは
『ガトー・オペラ・エピセ〜トリュフとハチミツのマリアージュ〜』
要は高そうなチョコレートケーキだ。
「湊はどうする?」
「……いや、まだ決まってない」
「じゃあ、彼はビーフカレーとブレンドで」
「かしこまりました」
カレーか、悪くないチョイスだ。
『特製ブイヨンと黒毛和牛の熟成スパイスカレー』
……さんぜんごひゃくえん!?
価格のギャップに心が震える。
凱はそんなオレの動揺を完全に楽しむようにふっと口元を緩めて、手元のノートPCに視線を戻した。キーボードを叩く長い指先が妙に憎たらしい。
「安心していいよ、僕の『構って接待』で経費だから」
……やっぱり、こいつに電話するんじゃなかった。
オレの後悔は高級ビーフカレーを一口食べた瞬間。
どうでも良くなっていた。
「……」
「僕は暇じゃないんだ」
凱の声は子どもを叱る親のようだった。
「……分かった。切るよ」
「ちょっと待って」
そういうと、保留音が流れはじめた。ややあって
「時間ができたから、構ってあげる。場所送るからそこで待ってて」
電話が一方的に切れた。スマホを確認する。
オレは指定された場所に車を走らせた。
パーキングに駐車して、指定されたラウンジに向かう。
「いらっしゃいませ」
渋いギャルソンに案内されて、街が一望できる窓際の席で凱を待つ。
メニューを開いて眺める。
ブレンドコーヒー1,500円。
冗談だろ。思わずメニューを二度見した。
オレは改めて店内を見回していた。
すると、スタイリッシュな出立ちの長身男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「……やれやれ、君たちは一人で過ごせない人種なんだね」
「なんの話だ」
「一昨日も日陽の相手をしたんだ」
「そうなのか」
そういえば、その日は日陽の公休だったな。
向かいのソファに腰をかけた凱にも疲れが顔に滲んでいた。
アタッシュケースからノートPCを取り出してテーブルに置いた。
さっきのギャルソンが注文を聞きにやってくる。
「僕はブレンドと、あとこれね」
凱が注文したのは
『ガトー・オペラ・エピセ〜トリュフとハチミツのマリアージュ〜』
要は高そうなチョコレートケーキだ。
「湊はどうする?」
「……いや、まだ決まってない」
「じゃあ、彼はビーフカレーとブレンドで」
「かしこまりました」
カレーか、悪くないチョイスだ。
『特製ブイヨンと黒毛和牛の熟成スパイスカレー』
……さんぜんごひゃくえん!?
価格のギャップに心が震える。
凱はそんなオレの動揺を完全に楽しむようにふっと口元を緩めて、手元のノートPCに視線を戻した。キーボードを叩く長い指先が妙に憎たらしい。
「安心していいよ、僕の『構って接待』で経費だから」
……やっぱり、こいつに電話するんじゃなかった。
オレの後悔は高級ビーフカレーを一口食べた瞬間。
どうでも良くなっていた。
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