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『何もしないの?』

第1章 何もしないよね?…

 1

「何もしないよね?」

「あ、はい、もちろんす」

「じゃ、ウチ来る?」

 会社の飲み会があり、二次会にカラオケに行き…
 気付くと終電ギリギリの時間であった。

 そして、他の皆は、慌てて駅へと走り…
 いつもより飲み過ぎたオレは、とても駅までは走れなく…

「終電いいの?」

「え、あ、美冴先輩…」

「は、はい、とても駅まで走れないっす」

「うふ、そうなんだぁ…」

「え、美冴先輩は?」

「えぇ、あ、わたしは、実はぁ、歩いても帰れる距離だからさぁ…」

「そ、そうなんすか」

「うん…それにね、健太くんがちょっだけ心配だったし…」

「え…」
 オレは、この美冴先輩の言葉に、ドキドキしてしまっていた。

 美冴先輩――
 会社の四つ歳上の先輩であり、上司でもあり…
 そして…
 秘かに憧れている存在でもあった。

「え、心配って?」

「今日さぁ、健太くん、田中課長に結構飲まされてたじゃん」

「あ、は、はい…そうっす」

「だからね、ちょっと心配でね…」

「え…」
 そう言ってくる、美冴先輩の笑顔に…
 少し、いや、かなりドキドキと高鳴ってしまっていた。

「あ、もう終電終わっちゃったよ」

「は、はい、いいっす、ネットカフェにでも行くっす」
 ホテルは高いし、ましてやタクシー代なんてとてもじゃないけど払えない…
 だから、それしか、選択肢はなかった。

「………うーん、じゃぁさぁ…」

「………」

「ウチ来る?」

「え?」

 心臓が、爆発しそうなくらいに、一気に高鳴ってくる――

「ウチに来る?」

「えっ、あっ、い、いや…」

「え、イヤなの?」

「あ、ち、ちが、あ、イヤじゃないっす」

 イヤなわけがない…

 でも――

「じゃぁ、来る?」

「あ、い、いや、あ、ち、違……」

「来たって、何もしないでしょ?」

「あ、は、はい、しない、しないっす」

「あ…じゃ、映画見ようよ」

「え、映画?」

「うん、見たいんだけど、ちょっと怖そうだからさぁ…一緒にさぁ……」

「あ、は、はいっ」

「映画だけだからね」

「もちろんす」

 もちろんだ…
 だって、ヘタな事して、万が一にも、嫌われたくはないから――

「うん、じゃぁ、行こ……」

「は、はい…」

 絶対に、何もしない…

 と、心に、誓った――



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