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『してほしい…』

第1章 してほしい…

 2

「もぉっ、言わせないでよっ」
 わたしは、顔を上げ…

「……」
 唇を、寄せていく。

「み、美冴…先輩ぃ……」
 ゆっくりと、恐る恐る健太の手が、肩に触れてきて…

「みさえ…で…いいわ…よ……」
 わたしは待ちきれずに、自分からキスをしていく――

「う…み、みさえぇ……」
 ようやく、健太の手が、グッと肩を抱き寄せてきた。

「あ、け、けんたぁ…」

「み、みさえぇ…」

 不器用に強ばった唇が固い…

「はぁ、はぁ、ふぅぅ…」

 鼻息が荒い…

「ん、んん…」

 強引に、舌先が、割って入ってくる――

「ぁ……ん……」
 これは、オンナの経験が浅いしるし…

『かわいいわ…』
 わたしの心が、キュンと高鳴る。

「み、みさえせん…あ、みさ…え…」

「けんたぁ…」

 元々、半年前の、あの残業の夜から、わたしの心に触れてきていた…
 あの目が…

『あ、ストッキングが伝線しちゃったわぁ』
 それからの残業中、その伝線をジッと見つめてくる健太の目に、震えてしまったのだ…
 それは、久しぶりに感じたオトコの視線…
 それがわたしを、彼氏と別れて以来、熱くした――

 健太が、かわいい部下から…
 オトコに変わった、夜だった――

『抱かれたい…』あれから、秘かに思っていた…
 だけどそれは、あまりにも現実的ではない欲望だった――

 だが、今夜の飲み会が…
 わたしの欲望のリアリティを高めてくれた。

『抱かれたい』

『抱いてほしい…』
 
 そして…

『してほしい…』

 してほしい…

 したい…

 もう、抑え切れない――

「あ、み、みさえ…さ、さん…」

 わたしは、唇を離し…

 顔を、健太の股間へと下ろし…

 スーツのチャックに触れていく――

 仕方ない…

 この健太では…

 わたしから仕掛けなければ――

「あっ」

 ジーーー………

 チャックを下げ…

 熱い、猛りを…

「けんたぁ……」

「あっ」

 唇に、含んでいく。

 我慢できない… 

 いや、今さら、我慢なんてできない。
 
 もう、嘘で繕う必要はない…

 熱い、夜の始まりだ――


 仕方ない
 吐息まじりの
 その言葉
 女心の
 嘘ほどけゆく

         完



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