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万華のむつごと

第5章 二十年後の夏祭り

中一の一学期が終わる頃。肖像画を描き合う課題で透子は志保とペアになった。

彼女が描き上げた透子の肖像画は、それは見事で、細密で、線の一本一本が繊細に伸び、鮮やかな陰影を浮かび上がらせていた。

黒いボールペンが生み出した美しい曲線の集まりによって、平たい白い画用紙に立ち上る花のように描かれた透子の顔に、透子自身が息を呑んだ。

「これは絶対に展覧会で入賞する」

透子が言うと、志保はこみ上げる嬉しさをかみしめて隠し、つまらない風を装って「べつに」と笑った。

結果、信じられないことに、美術の教師は志保の絵を「ボールペンで描いた絵は今回の課題として認められない」と選考対象から早々に外した。そして、透子の絵を出品作品として選出したのだった。

透子自身、自分の絵の出来栄えに、これといったものを感じていなかっただけに、納得ができなかった。

美術教師が透子の絵を推薦した背景に、PTA連合会の会長を務める透子の親への忖度があることは透子自身にはわかった。

不満だった。
だが志保は鼻で笑って「ほらね、そういうことなんだよ」と言っただけだった。

放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、志保が書いた肖像画の画用紙がちぎってばらまかれていた。

透子は激しい腹立ちをおさえて紙くずとなった肖像画をかき集めたのだが、白い紙きれの散らばる真ん中に立ち尽くしていた志保は、「自分でやった」と笑ったのだった。

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