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万華のむつごと

第5章 二十年後の夏祭り

闇を映していた両目から、大きな涙の粒が膨らんで頬を伝い落ち、震える唇に吸い込まれた。

「万華鏡ってのは、綺麗なんだな」

縁日の人ごみにしゃがみこみ、光に向かって小さな筒を覗いていた健太を思い出す。そして、その後のひとすじの涙も。

あのとき健太は、志保が見ていたものをその昏い目に映し出していたのだ。

健太の唇の震えは全身に広がり、肩までもを震わせた。さっきまでの強い健太はどこにもいない。

透子は思わずその大きな体を抱きしめた。

「ねえ、どうして夏祭りのあと、急にいなくなっちゃったの」

そばにいたならば、悲しい思いを少しは分かち合うことができたかもしれないのに、と透子は思った。

「祭から帰った夜、俺、親父をぼこぼこにしちまったんだ。親父の野郎、志保の体を・・・」

透子はふと、しょっちゅう痣ができていた志保の手足や首筋のキスマークを思い出し、戦慄が走った。

「ごめん。俺と透子は住む世界が違う」

健太は泣くのをやめ、透子の腕に触れ、そっと体を離した。

透子はそれでもまた、健太の胸板にしがみついた。

「健ちゃん、お願い」

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