テキストサイズ

孤独を埋めて、満たして

第1章  孤独を埋めて、満たして




「…先生から。進路希望の書類、明日までに提出だって」

「へえ、わざわざ委員長が直々に?俺の進路はー、適当にどっかの企業にでも就職して、遊んで暮らせればいっかなー」



彼は封筒を受け取りながら、ヘラヘラと笑う。その笑顔を見るたびに、胸の奥が冷えていくのを感じる。


女の子の温もりで満たされた直後だろうと、彼の瞳の奥にあるのは、凍えるような虚無だけ。


誰にでも優しくて、誰のことも愛していない。ただ、一人になるのが怖くて、壊れそうな心を必死に守るために、温もりを貪り続けている。

その痛々しいほどの歪みが、なぜだか酷く鮮明に視えてしまった。



「……可哀想な人」



気がつけば、声が漏れていた。


その一言が落ちた瞬間、成瀬くんのいつもの甘い笑顔が、ガラスが砕けるように消え去った。



「──は?」



次の瞬間、私の手首は骨がきしむほどの強い力で掴まれていた。


痛い、と声を上げる隙さえ与えられないまま、私は半ば強引に、薄暗い彼の部屋へと引きずり込まれる。


バタン、と重いドアが閉まり、世界が二人きりに閉じ込められた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ