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神籬の内

第1章 荷物

 全身に初めて恐怖が走る。がくがくと震えた足から力が抜け、その場にぺたりと力なく落ちた。
 家があった、という事実はこの場になにひとつ存在などしなかったのだ。嘘、だ……と漏らした声に友人は慰めか、肩に手を置き苦笑した。

「とりあえず、お前が運んだ荷物を見に行ってみようぜ」

 まだどこか理解を脳が拒否していたが。しかしこうなったら確かめてみるしかない。息を整えて助手席に友人を乗せ、車を走らせていく。緩やかな丘を越えて神社に向かうための駐車場へと辿りついた。

「神籬神社のあるこの山の、禁止領域の向こうに本殿があるっていうよな」
「ああ、でもその領域って神官でも選ばられたものしか入れない。秘祭が七年に一度あるらしいってのはおやっさんに聞いたことある」
「へぇ…字書きとしては興味あるけどなぁ……」
「ああそういや、玲児お前には稲火紹介して無かったな。奴がその神官だぞ」
「神職…神主とかいわねぇの…?」

 そういや、なんで神官というんだろうって思ったが。またの機会に本人聞こう。そして東京から此処に住処を変えて思ったが。至るところに不思議な感覚があるのを自覚する。普段は一切気にならないのに、どうして今日はまた気になるのだろうか。と思いながら車を走らせている間に第一の目的地である駐車場へと辿りついておりた。
 そしてあの日住職の後をついて歩いた先にあったのは、ひとつのお堂だった。
 確かに扉を開けて、箱を運んだお堂である。異様な空気は構わず出し、周囲の樹が堂を囲んでいる様子に、本当にヤバいものを運ばされたのを確信して。稲火に電話をかけた。

『もしもし、久しぶりですね。お元気ですか?』
「………………ぇ? 七日前に電話をくれた…のは?」
『電話? いえ、今久しぶりの連絡を頂きましたよ?』
「……………………お祓い…してくだちゃい…」

 自分はいったいどんな目にあって。こんなことになっているのだろう! 恐怖の旋律で、お迎えしてくれると言ったので、そのまま玲児を連れて古都町にある古都神社に速攻でお祓いにいくのだった。
 あの青年は誰だったのか。
 どうして稲火からのスマホ連絡だったのか。
 箱の正体はなんだったのか。
 たくさんの不思議に呼吸は乱れ困ったが。とりあえず――生きてて、よかったと心底思った晃がいた。

おしまい
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