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My Godness~俺の女神~

第6章 ♯Conflict(葛藤)♯

「俺もそろそろ、この稼業も潮時だと思ってるんだ。何せ俺、もうじき二十五だし。この世界は若いヤツが次々に入ってくるから、いつまでも続けられるものじゃないしなあ。入店以来、ずっとトップを維持してきた悠理のようなヤツは滅多といないし」
 と、柊路が首をひねった。
 実里は自分でも顔が蒼白になるのが判った。
「冗談、冗談だよ。そりゃ、実里ちゃんと結婚できるなら、ホスト止めても良いと思ってるのは本当だけどね。まあ、頭の片隅にくらい入れといて。お腹の子どものことも全然、気にしない。こう見えても、年の離れた弟妹がいるから、子どもの扱いは上手いんだよ、俺」
 柊路が冗談に紛らわせようとしても、実里は笑えなかった。
 〝溝口悠理〟。もう二度と耳にしたくない、顔も見たくない男が突如として伏兵のように出現したのだ。
「どうしたの? 顔色が悪いよ。俺が冗談にしても、結婚の話なんかしたからかな」
 実里の脳裏に〝あの日〟の光景がまざまざと甦った。
 跳ねる実里の身体を上から押さえつけ、奥まで何度も刺し貫いた男。下腹部が引き裂かれそうな痛みに涙を流す実里を下から烈しく突き上げながら、あの男は自らの快楽をもっと貪るために、実里の乳房を揉みしだき、二人の接合部を弄り回した。
―こうやると、あんたのあそこが俺のを物凄い勢いで締め付けて、気持ち良いんだよ。
 淫らで残酷な科白を毒のように耳許に流し込みながら、悠理は実里の中で何度も射精した。それが、今日の実里の姿に繋がったのだ。
「あ、ああ」
 実里はその場にうずくまり、身体を丸めた。
 怖かった。辛かった。死んでしまいたかった。嫌だと叫びたくても、それさえ許されなかった。
 あの時、確かに実里は思ったのだ。
 一体、自分は何のために生まれたのだろう、と。まさに煉獄で業火に焼かれているような痛みと傷を実里の心身に刻み込んだ。
 あの日の忌まわしい汚辱の記憶が次々と再現されてゆく。頭を両手で抱え込み、実里は、あの日の恐怖と闘った。
「実里ちゃん? どうした、しっかりしろ」
 柊路がしゃがみ込み、実里の肩に手をかけたその時、実里の恐慌状態は頂点に達した。

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