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My Godness~俺の女神~

第6章 ♯Conflict(葛藤)♯

 実里は言葉を探しながら慎重に言った。
「私は片岡さんのお仕事のこととか、全然気にしてません。それを言ったら、私の方がよっぽど社会のあぶれ者ですよ。会社もクビになっちゃったし、今、流行のシングルマザーにもなるわけだし」
「ねえ、こんなこと訊くのは失礼だと思うんだけど、どうして、お腹の子どもの父親と結婚しないの?」
 これまでも何人もの人に訊かれたことだ。
 実里は小さな声で言った。
「相手の男は妻子持ちなんです。だから、私と一緒になることはできなくて」
 淀みなく応えた実里を、柊路はじいっと見つめてくる。まるで嘘など端からお見通しだよ、とでも言いたげな鋭い視線だ。
「認知くらいはしてくれてるんだろ?」
 実里は首を振る。
「―その人は子どもができたことは知りませんから」
 柊路が声を荒げた。
「そんな馬鹿な話があるか! 手前だけ愉しむだけ愉しんどいて、いざ子どもができたら、知らん顔だなんて、あまりにも男として責任
がなさすぎる」
「だから、相手の人は―」
 実里が狼狽えても、柊路の憤りはおさまらないようだ。
「知らないんなら、俺が知らせてやるよ、どこのどいつだ? 俺が落とし前つけさせてやるから」
 言葉そのものは荒いが、心底から実里のために腹を立ててくれているのだと判る。
 ここにも自分のことを気にかけてくれる人がいる。実里は泣きたくなった。
 思わず涙がほろりとこぼれ落ちた。
 柊路が眼を見開く。
「実里ちゃん? 何で泣くんだ。俺、何か泣かせるようなことを言ったかな。それとも、俺が一方的にまくしたてたから?」
「片岡さんが物凄く優しいから。嬉しくて、つい」
 柊路は何故か実里を眩しげな眼で見た。
「そいつとどうしても結婚できないっていうんなら、俺はどう? ああ、でも、ホストなんかやってる男、堅気のお父さんには婿として認めて貰うのはいまいち難しいかな」
 柊路は真剣な表情で考え込んでいる。

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