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My Godness~俺の女神~

第6章 ♯Conflict(葛藤)♯

 スーパーの近くに小さな公園があった。
 いつか早妃と寄ったことがある。
 あの頃、早妃は妊娠五ヶ月で、近くの神社で簡単な安産の祈祷を上げて貰い、腹帯を貰って帰る道すがらであった。
 ほんの猫の額ほどの公園にはブランコと滑り台があるだけで、それすらも今は殆ど使用されていないらしい。
 草がぼうぼうに生えて、忘れ去られたかのようなブランコと滑り台が淋しげに見えた。
 早妃と並んでブランコに腰掛け、揺らしながら見た世界はすべてが希望に溢れ輝いて見えた。
 あれからまだ一年も経たないのに、何と世界は変わってしまったのか。
 悠理はブランコに乗り、訳もなく揺らしながら空を振り仰いだ。
 失った赤ん坊が戻ってきた。
 そう思った歓びも束の間、父親になるという夢はすぐに潰えた。
 そもそも当たり前なのだ。悠理はあれほどまで徹底的に実里を辱めた。その挙げ句に身籠もった子を産もうと彼女が決意しただけでも、実里には感謝すべきだろう。
 そんな彼女が今になって、悠理が手を差しのべたところで、ありがたがるはずがない。むしろ、いつまでも忌まわしい過去を思い出させる男が周囲をうろつけば、迷惑がるに決まっている。
 柊路の言うことは間違ってはいなかった。
 たとえ、どれほど人を憎んだとしても、この世にはやって良いことと悪いことがある。
 ましてや、早妃の死は本当は実里のせいではない。彼女を憎むことで、早妃を失った哀しみを別の方に向けようとしただけだ。
 むしろ、実里は会社での立場も悪くなり、しまいには俺に妊娠させられて、辞めざるを得なくなった。そして今、未婚の母として生きようと健気にも頑張っている。
 俺は結局、自分で自分の首を絞めたんだ。
 折角、我が子がこの世に―今度こそ元気な赤ん坊が生まれてくるというのに、その子をこの腕に抱いてやることも父親と名乗ることも許されない。
 しかし、それだけの罰を受けても仕方のないことを俺は彼女に対してした。
 薄青い初冬の空にひとすじ、絵の具を垂らしたようなちぎれ雲が浮かんでいる。
 ふいに空の色がほやけて、悠理は眼をしばたたいた。頬が濡れている。どうやら、知らない間に泣いていたらしい。

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