テキストサイズ

My Godness~俺の女神~

第5章 ♯Detection(発覚)♯

 これだけの贅を尽くしたマンションに暮らしていれば、実里の家は潤平の眼にはさぞ貧相に映じたことだろう。たまに訪れる彼は、どこまでも穏やかな物腰の好青年にしか見えず、両親は大いに彼を気に入っていた。しかし、にこやかな笑顔の下で、潤平は何を考えていたのか―。
 十二階に着いた。実里はエレベーターから滑り降りると、突き当たりに向かって進んだ。紅い絨毯を敷き詰めた廊下はゆったりとしており、やはり有名ホテルの優雅な雰囲気を漂わせている。
 インターフォンを軽く押すと、ほどなく内側から応答があった。
「どちらさま?」
 その聞き慣れぬ声に、実里は慄然とした。
あろうことか、その声の主は女性であった。
 向こうで、やりとりする気配が伝わってくる。声は低くて聞き取れない。男と女の声。やはり、潤平はマンションにいたのだ。
 やがてカチャリと内側からロックが外され、重厚なドアが開いた。
「あら、どなた?」
 出てきたのは、実里の見たことのない女だった。背の高い、すらりとした容姿は艶然と咲き誇る深紅の薔薇を思わせる。愕いたことに、女はオフホワイトのバスローブを身に纏っていた。漆黒の丈なす豊かな黒髪はまるでそれ自体が意思を持っているかのようにうねり、濡れている。
 化粧はしていなかったが、白皙の面にそこだけ一点、緋色のルージュが艶めかしくもあり毒々しくもあった。
「潤ちゃん、可愛い子が来てるわよ」
 〝潤ちゃん〟の部分だけがやけに強く聞こえたのは、気のせいだろうか。
 次いで潤平が姿を現した。
「何だよ、美津江。客か?」
 これだけゴージャスな美女を相手にしても、傲岸で俺様な物言いは変わらないところは潤平らしい。
 やはり潤平もお揃いのバスローブ姿だ。慌てて着たのか、バスローブの前ははだけ、逞しい胸が覗いている。
 お揃いのバスローブを身に纏った二人が直前まで何をしていたか。流石に男女のことには疎い実里にもすぐ理解できた。
「あなたって、最低」
 乾いた音が静寂に響き渡った。殴られた潤平は何が起こったのか判らないようなポカンとした表情である。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ