テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 翌日の放課後。愛美は生物室に向かって走っていた。

 どうやら六限にあった生物の授業で、教科書とルーズリーフを一式忘れてきてしまったらしい。

 学校を出てしばらく歩いてから気付き、慌てて取りに戻ったのだった。

 生物室は一階の奥の方にある。

 すでに学校の生徒はほとんどいなかった。人気(ひとけ)のないその部屋に辿り着き、自分の座っていた席の、机の奥を覗き込む。

 慌てていたため教室の電気は点けなかったが、まだカーテン越しに陽の光は差し込んできていて、十分明るかった。

 その光に照らされ、教科書、ルーズリーフ、おまけに筆箱が見えた。

 今日は顕微鏡で微生物の観察をしたので、教科書などを机に押し込みそのまま忘れてしまったらしい。

 とりあえず見つかって、愛美はほっと胸をなで下ろした。

 来週までに微生物の考察を書いて提出しなければいけないため、どのみち無いと困るのだ。

 一式を胸に抱え、生物室を出ようとした時だった。


「――今日はありがとう!」


 ふいに女生徒の声が聞こえ、愛美は飛び上がりそうになった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ