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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 密室の空間に、彼と二人きり。その事実が、愛美の緊張を余計に高ぶらせる。


「長机の上、座って」

「うん……」


 宵は淡々とした声で言った。

 愛美は言われた通りに長机の上に腰を下ろす。

 彼の白い指先が、愛美の首に触れた。


「……っ」


 びくっとして、愛美は思わず身を引いてしまう。

 宵は強引にそれを追おうとはしなかった。

 愛美にとっては、男の子とこんなに間近で触れ合うなんてもちろん初めてのことだ。

 激しい羞恥とともに、期待も大きかった。

 何年も憧れていた人が、目の前にいる。その事実に胸が震える。

 宵が着ている黒いセーターの下、二つ開けたままのワイシャツのボタン。そこから覗く首筋や鎖骨。

 そこだって、指と同じく透けるように白い。

 宵の胸元から目が離せずに硬直したままだった愛美の頬に、今度宵の手の平が触れた。

 視線をわずかに上げると、灰色の瞳が見える。

 愛美はふと気づいた。

 彼の瞳にも、きっと自分の顔が映っているのだ。

 愛美は自分の顔があまり好きではなかった。

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