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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 ただだだっ広いばかりで物があまりない生物室よりは、狭くて教材などが詰め込まれた理科準備室の方が逃げ場所がある。

 廊下の一番奥にあるのも理科準備室の方だ。

 そこには納得できるけれど、あっさり自分の要求を呑んでもらえたことが信じられなかった。



「ほら、拾えよそれ」


 促され、愛美は慌てて散らばった教科書やルーズリーフ、筆箱を広い集めた。

 鞄も同時に肩にかけ直す。

 それを見届けて生物室を出て行く宵の姿を急いで追いかけた。

 宵は理科準備室の前に立ち、扉を開けてくれる。

 見渡すと、教室の中は薄暗かった。

 きっとカーテンを締め切っているせいだ。

 ごちゃごちゃと物が詰め込まれた理科準備室の真ん中には、長机が二台並べて置かれていた。

 ドア付近で硬直したままなかなか足を踏み入れられない愛美を、宵が促す。

 愛美は高鳴る鼓動を必死で抑えて、教室の中へと一歩踏み出した。

 すぐにドアの閉まる音と、がちゃっと鍵がかけられる音がした。

 簡易なものだけれど、ここにも一応中から開け閉めができる鍵がついているらしい。

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