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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 頭の上の手と、問いかけられた言葉の内容に、愛美はしばらく反応できずにいた。

 数秒を要して、やっとのことで言葉の意味を理解する。


「ええ!?」

「しーっ」


 思わず叫んでしまった愛美は、宵に人差し指で合図をされて、とっさに口元を抑えた。


「また見つかると困るから、あんま大きな声出すな」

「むぐむぐ……」


 たしなめられてまたこくこくとうなずく愛美。

 口を塞いだまま返事をしたせいで、酷く間抜けな声が洩れた。


「で、土曜は平気?」


 再びたたみかけられて、顔を覗き込まれる。



「うん……、全然大丈夫。荷物とかもうほとんどまとめてあるしっ」


 息せききってそう返す愛美に、宵はうっすら笑ったような気がした。

 鮮やかな笑顔に一瞬見とれそうになるも、その表情にはどこか違和感があった。

 それがなんなのか、よくはわからない。

 ただ、鮮やかだけれどどこか寂しげにも見えるその笑みは、自分に向けられているはずなのに、もっと別の誰かに向けられている気がした。

 彼は自分を誰かと重ねている。直感的にそう思った。

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