
Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
きっぱりとそう誓う。
決して脅すつもりであんなことを言ったわけではない。それだけは伝えたかった。
宵に迷いはないらしい。
宵は愛美の鞄を窓際の壁に立てかけて、自分の物は外へと放る。そうして窓枠に手をかけた。
身軽で素早い動作であっという間に外へと出ていってしまう。
(行っちゃう)
その背中が、酷く名残惜しかった。
だが宵はすぐに振り向いて、立てかけた愛美の鞄を外へと引き上げた。
「それ……」
「桐原ももう一度登れ。体が浮けばあとは引き上げてやるから」
「引きっ……!?」
「早く!」
苛立ったように怒鳴られ、深く考える前に体が動いていた。
窓枠に再び手を置き、ジャンプして体を持ち上げる。
右足を乗せ、左足に力を入れた途端に、宵の手が滑り込んでくる。
「ひゃあ……!」
両脇をがっちり掴まれ、バランスを崩して愛美は細く悲鳴をあげた。
気付いた時には前につんのめりそうになった体ごと、彼の腕に抱き留められていた。
(嘘ぉ……!?)
胸板の感触と、温かな体温。甘い匂いが鼻孔をくすぐり、頭はパニック寸前だった。
