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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


(抱っこ!?)


 引き上げてやると言った言葉の意味を、ようやく理解する。

 間近で灰色の瞳とばっちり目が合ってしまい、もう耐えきれなかった。

 条件反射のように、彼の両肩を突き飛ばす。

 宵はよろけた程度だったが、愛美の足はまだ地についていない。

 上手く着地できずに結局またつまずき、窓枠のコンクリートの壁に背中を打ちつけてしまった。


「暴れるから」


 尻をついて座り込み、背中を打った衝撃に顔を歪めて息を詰める愛美。

 心配ではあったが、宵はとりあえず窓からの脱走の事後処理を優先した。

 宵は窓を閉めた。

 瞬間、ドアの向こうに懐中電灯の灯りが映る。

 教師はすぐそこまで来ている。

 どうやら、逃げられたのは間一髪だったらしい。


「歩ける?」


 しゃがみ込んで愛美に問いかけるが、愛美はまだ苦しそうな表情をしている。


「ごめんちょっと乱暴に扱いすぎた」


 背中をさすりながら謝られて、言葉を発するには辛かった愛美は首を横に振る。

 ようやく痛みが薄れ、愛美は思いきり息を吸い込んだ。


「だ、大丈夫!!」

「あーだから声のボリューム……っ」

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