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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 しまったと思った時には、彼の手に口を塞がれていた。

 背中をさすっていた手がそのまま口元へとまわってきているので、自然と肩を抱かれているような体勢になる。

 体もまた密着している。

 心臓が爆発しそうで、愛美は真っ赤になった。


「足縮めて」


 耳元で囁かれ、愛美は慌てて従う。

 だけれど口と鼻をいっぺんに塞がれたせいで、このままだと呼吸ができない。

 それを伝えたくて両手で宵の腕を掴んだけれど、彼はしきりに窓を気にしているらしく、気付いてもらえなかった。


「んーっ」

「静かにしてろって」


 たしなめられて、さらに宵の手の力が強まる。

 足音が響いて、すぐに窓が開いた。

 そこから顔を覗かせた教師は、一年一組の担任である倉木(クラギ)という若い女性教員だった。

 倉木は辺りを見回し、不審げに首をかしげた。


「締め忘れかしら」


 窓の鍵が開いていることへの疑問らしい。

 だが、すぐに締め忘れということで納得したらしく、窓は閉められ鍵のかかる音が響く。


「……なんとかバレずに済んだみたいだな」

「うぅ、んうー、うー!」

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