Memory of Night 番外編
第2章 Episode of YOI
「もう、彼のことはいいの。メアドはいらない」
それが愛美にとっての本心だった。
久々に聞いた彼の名前に心は一時昔の思い出に浸ってしまっていたけれど、今の気持ちはとても晴れやかだ。不思議なくらい。
あの夜彼と話せて、彼のことを少しだけ知れて、それで踏ん切りもついた。
もう本当に十分だった。
「なーんだ。愛美のことだから、まだうじうじ引きずってるのかと思った」
明は悪びれもせずに、そんなことを言う。
「えー酷いよそんな言い方」
「まぁ冗談だけど」
ムキになる愛美に、今度は明がくすくすと笑う。
「でも、ちょっとおせっかいだったかな。勝手にメアド送りつけたのは」
「そんなことないよー。明ちゃんの気遣いは嬉しかったよ」
愛美はそこで、つかの間口をつぐんだ。
前々から気になっていたあることを思い出したのだ。
ずっと頭の隅で疑問に感じてはいたけれど、尋ねることはできずにいた。
それが今になって、どうしても聞いてみたい衝動に駆られた。
「明ちゃんは大河くんのこと、なんとも思ってないの?」