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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 静まり返った薄暗い部屋で、愛美はずっと長いこと携帯画面を見つめたままでいた。

 それからふと気付き、部屋の窓にかかったカーテンを振り返る。

 微かなオレンジ色を残して沈んでいく太陽。陰った室内。

 その光景が、二年前に彼といたあの理科準備室の風景と重なって見えた。

 愛美はもう一度携帯画面に視線を戻し、わずかに目元を和らげた。

 暗くなった画面を適当な操作で明るく戻し、さらに何度かボタン操作を繰り返す。


『削除しますか?』


 無機質に浮かび上がった文字。愛美は躊躇うことなく『はい』を選択した。

 明のメールと、同時に彼のEメールアドレスも削除されたことになる。

 これで唯一の彼との繋がりも断たれてしまったけれど、後悔はしていなかった。

 あれは綺麗な思い出として、自分の中にしまっておきたい。

 漆黒の髪も灰色の瞳も、精巧なお人形のような綺麗な容姿も、愛美はこれから一生忘れることはないように思えた。

 愛美は携帯をそっと閉じて、机の上に置いた。


「――さようなら」


 そっと呟やいた決別の言葉にまるで応えるかのように、白い携帯が鈍く輝いた。


――END――

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