Memory of Night 番外編
第3章 熱々、バレンタインデー!
「そのチョコの山、ほとんど女子からだろ? なら女子に聞けば? 名前」
「え?」
顔を上げた宵に、大山は窓際の席を指差した。
「あいつとか」
その席で鞄を何やらごそごそ漁っているのはこのクラスの学級委員でもある女生徒、菊池明(きくちあかり)。
宵はああ、と小さくつぶやいた。
確かに明なら、顔も広いし女子なこともありチョコレートの差出人が誰なのか、名前だけでわかるかもしれない。
とてもいい人事選択だとは思うものの、一つだけ問題があった。
(でもなー、晃がうるせーし)
宵の頭に、嫉妬深い優等生の顔が浮かぶ。
晃は明との関係を何かと疑ってくる。
冬休み前も明とのことを誤解され、コタツで酷い目に合わされたことを思い出すと、むやみに明に近づくのは自分の保身のためにも良くないような気がしてならなかった。
腕を組んで考え込む宵を、大山がさらに煽った。
「おい、ショートホームルームまであと十分だぞ。とりあえず机の上のチョコなんとかしないとノートが……」
取れないぞ、と続けようとして、大山が言葉を切る。
宵が立ち上がって、明のところに向かったからだ。