Memory of Night 番外編
第3章 熱々、バレンタインデー!
「明」
机の前で呼びかけると、明は鞄を漁るのをやめて顔を上げた。
「あ、宵。おはよー」
にっこりと屈託のない笑みを浮かべて、そう挨拶が返ってくる。
「そうだ。宵にも友チョコあげるよ。今日バレンタインだよ、覚えてる?」
机の横にかけてある紙袋から大きな赤いタッパーを取り出し、明は楽しげにそれを開く。
中にはココアパウダーをまぶしたトリュフがいっぱいに詰め込まれていた。
「クラスの子に配ろうと思ったんだけど、一個一個包むの面倒だからまとめて作ってきちゃった。んー、ちょっとつぶれちゃったけど、味は保障するよー」
適当に摘んでー、などとタッパーを差し出してくる明に、こんなノリだったらまだ気も楽なのに、と宵は心の中で嘆息した。
机の上にどっさり置かれたチョコレートたちは、いかにも気合入れて作りました感が出ていて、正直重いのだ。
「明、今暇?」
「え……、暇も何もこれから授業……」
「ちょっと付き合え」
そう言って、有無を言わせず明の腕を引っ張り、席から立たせようとする。
「うわっ、ちょっとコケる」