Memory of Night 番外編
第3章 熱々、バレンタインデー!
机につかまりどうにか体勢を立て直す明。
宵は何を思ったのか、今度は明がタッパーを入れるために持ってきた紙袋を手に取った。
「これ貸して」
「何してんのっ」
まだ許可も出さないうちから紙袋を引っつかみ、自分の席へと戻っていく宵。
明もそれを追うと、宵の机に置かれた山積みのチョコレートが目に入った。
「何これー! すっごい量!」
「今日中に全部返しに行くんだよ」
明から勝手に拝借した紙袋に適当にチョコレートを放り込みながら、宵は答えた。
「ほら、走れ!」
ほとんど怒鳴るように言って、再度明の腕を掴んで教室を飛び出していく。
「あーもう! だから一体なんなの! 授業が!」
「あと七分だぞー、頑張れー」
明の悲鳴を受けて、大山は間延びした声でそう助言してやる。
宵はどうやら明を連れて学校中をまわるつもりらしい。
大山はふっと小さくため息を洩らしてつぶやいた。
「にしても、女子から貰ったチョコを返すのに別の女子を連れてくなんて。あいつもデリカシーのないやつ。あれでモテるんだから、結局人生顔ってことか?」
大山にとっては、そこだけがどうしても腑に落ちないのであった。