テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


「だろ?」


 問いかけられて、宵が頷く。


「……よく来んの? ここ」

「まあ、何度か来たことはあるよ。片手で数えられるくらいだけどね」

「…………彼女と?」


 大分間を空けて、付け加えるように宵がそう問いかける。

 晃は一度目をぱちくりさせて、思わず穴の空くほど宵の横顔を凝視してしまった。

 小さな明かりしかないため展望室の中は薄暗かった。 

 そんな場所で、宵は相変わらず、普段通りの取り澄ましたような表情を保っている。

 でもその唇は、普段よりもわずかにきつく引き結ばれている気がした。


「何々!? もしかしてヤキモチ?」

「はあ!? 誰がそんなの妬くか!」


 宵が振り向き、慌ててそう言い返す。

 晃の恋愛事情は、はっきり言って謎だ。

 今まで何人と付き合ったことがあるのか、その子は女なのか男なのか、タメなのか年上なのか年下なのか。もしかしたら、学校以外の子とも関わりがあったのかもしれない。

 思い返してみても、晃とその類の話をしたことはない気がした。

 晃の性格なら、きっとどんな恋人であろうとも上手にエスコートして楽しませることができただろう。

 今日のように。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ