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Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


「――彼女となんて来たことないよ。てゆうか恋人とここ来たことないし」


 たっぷりすぎるほどの間を空けて、ようやく晃はそう答える。

 宵ははっとして沈みがちだった顔をあげた。

 振り向くと間近にある晃の視線とぶつかって、今までずっと自分の様子を観察されていたことに気付く。


(悪趣味)


 もうわかっていることだから、いちいち口には出さないけれど。


「一度も?」

「うん、一度も」


 宵は再び窓に手を添え、外に視線を向けてしまう。

 晃は、そんな宵の体を後ろから抱きしめた。

 宵の肩に顎を乗せて、夜景を見下ろす。


「いい眺め」


 宵はちらりと、晃を窺うようにその灰色の瞳を向けた。

 対して、晃はわざとらしいくらいに綺麗な笑みを浮かべて宵に問う。


「気になることがあるなら、素直に言えばいいだろ?」

「……別に」

「意地っ張り」

「うるせー」


 晃は困ったように笑いながら、ふうと小さく息を吐き出した。


「女の子ってさ、こういうとこより、遊園地とか、街とか、プリクラとか撮り行く方が喜ぶんだよな」


 それから独りごちるようにそう呟く。

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