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Memory of Night 番外編

第3章 熱々、バレンタインデー!


 宵の肩に顎を乗せた体勢のまま横目でちらりと宵を垣間見ると、不機嫌そうに瞳を細めていた。


「そりゃ、お付き合いはそれなりにしてきたけど、あまりデートらしいデートはしなかったよ」

「嘘つけ」

「ホントだって」


 じろっと睨まれ、晃は苦笑する。


「……したいって思わなかった。彼女ができても、好きなところに連れてってやりたいとか、綺麗な景色を見せてやりたいとか、喜ばせてやろうとか、思わなかった。……大切だって思ったことなかったのかもしれない」


 晃は今度は顎の代わりに頬を乗せ、どこか申し訳なさげな口調でそんなことを言った。

 付き合っていた子にせがまれて、遊びに連れて行ったことはあった。

 だがそれも今思えば中学くらいまでだったかもしれない。

 体を繋げる快感を知ってからは、そればかりに熱中していたような気がする。


「それでも結局飽きちゃって、長続きしたことはなかったしなぁ」


 人の気配の全く無いこの場所は静かで、やたらと晃の呟きは辺りに響いた。

 茶色い瞳は変わらず夜景に注がれたまま。

 それでもコート越しに、確かに晃の体温と頭の重さを感じていた。

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