
淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④
第8章 夫の秘密
「止めて! 言葉の上だけでも、そのような辱めは受けたくありません」
思わず叫んだ春泉を、秀龍は暗い眼で見た。
その双眸に蒼白い焔が燃え盛っていた。これまでの彼とは別人のような醒めた眼をしている。
春泉の膚がゾクリと粟立った。
「言葉の上だけだと? 私をここまで挑発しておいて、言葉だけで済むと思っているのか?」
秀龍が春泉の手を掴み、グッと引き寄せた。腰に手が回され、いっそう強い力で抱き寄せられる。
秀龍が唇を重ねようと顔を近づけたその切な、春泉は叫んでいた。
「止めて―、汚い」
そのひと言に、秀龍の動きが止まった。
「そなた、今、何と言った?」
秀龍の眼が春泉を射るように大きく見開かれた。
「そなたは、それほどまでに私を嫌うのか? 指一本触れられるのも嫌だと―そういうのか?」
駄目、言っては駄目と、春泉の中で、もう一人の自分がしきりに囁いていた。
だが、言葉がひとりでに零れ落ちていた。
「秀龍さまこそ、いつも懲らしめのように私の身体に触れてくるのですね」
「春泉―」
秀龍が口を開きかけたのに、春泉は覆い被せるように言い放つ。
「十日前もそうだった。あの日、秀龍さまは私を天上苑に連れていって下さいました。その時、私は秀龍さまを怒らせるようなことを言ってしまった。だから、あなたは、あの夜、私に酷い仕打ちをしたんでしょう? 私を懲らしめるつもりで、あんなことを!」
「春泉、それは違う」
「いいえ、違いません。今だって、そうじゃありませんか。秀龍さまは私に腹を立てたから、また触れようとなさったのです」
初めての夜は、いきなり〝形だけの妻でいさせて欲しい〟と言い出し、秀龍を怒らせた。あのときも、恐らく彼は腹立ち紛れに春泉を抱こうとしたに違いない。
「どうして、そんな風に思うんだ。私はそなたに惚れている。何度言えば、そなたは、私の言葉を信じる?」
ムキになった秀龍が更に春泉の背中に回した手に力を込めた。幾ら渾身の力で離れようとしても、秀龍と春泉とでは所詮、大人と子どもほどの力の違いがある。
思わず叫んだ春泉を、秀龍は暗い眼で見た。
その双眸に蒼白い焔が燃え盛っていた。これまでの彼とは別人のような醒めた眼をしている。
春泉の膚がゾクリと粟立った。
「言葉の上だけだと? 私をここまで挑発しておいて、言葉だけで済むと思っているのか?」
秀龍が春泉の手を掴み、グッと引き寄せた。腰に手が回され、いっそう強い力で抱き寄せられる。
秀龍が唇を重ねようと顔を近づけたその切な、春泉は叫んでいた。
「止めて―、汚い」
そのひと言に、秀龍の動きが止まった。
「そなた、今、何と言った?」
秀龍の眼が春泉を射るように大きく見開かれた。
「そなたは、それほどまでに私を嫌うのか? 指一本触れられるのも嫌だと―そういうのか?」
駄目、言っては駄目と、春泉の中で、もう一人の自分がしきりに囁いていた。
だが、言葉がひとりでに零れ落ちていた。
「秀龍さまこそ、いつも懲らしめのように私の身体に触れてくるのですね」
「春泉―」
秀龍が口を開きかけたのに、春泉は覆い被せるように言い放つ。
「十日前もそうだった。あの日、秀龍さまは私を天上苑に連れていって下さいました。その時、私は秀龍さまを怒らせるようなことを言ってしまった。だから、あなたは、あの夜、私に酷い仕打ちをしたんでしょう? 私を懲らしめるつもりで、あんなことを!」
「春泉、それは違う」
「いいえ、違いません。今だって、そうじゃありませんか。秀龍さまは私に腹を立てたから、また触れようとなさったのです」
初めての夜は、いきなり〝形だけの妻でいさせて欲しい〟と言い出し、秀龍を怒らせた。あのときも、恐らく彼は腹立ち紛れに春泉を抱こうとしたに違いない。
「どうして、そんな風に思うんだ。私はそなたに惚れている。何度言えば、そなたは、私の言葉を信じる?」
ムキになった秀龍が更に春泉の背中に回した手に力を込めた。幾ら渾身の力で離れようとしても、秀龍と春泉とでは所詮、大人と子どもほどの力の違いがある。
