淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④
第8章 夫の秘密
「でもさ、兄貴。俺は少しでも兄貴の役に立ちたいんだよ。兄貴が身寄りのない孤児たちを集めて面倒を見てるのに、俺は、ずっと何の力にもなれなかった。そりゃ、昔は俺もガキだったし、無力だったさ。どんな偉そうなことを言ってみたって、兄貴に面倒を見て貰ってるみなしごの方だったんだから。けど、今なら、俺だって、少しは役に立てる。俺が色狂いの客たちから巻き上げた金品で、子どもらに少しでも美味いもの食わして、綺麗な服を着せてやって欲しいんだ」
「お前を犠牲にして得た金を、私が子どもたちのために使うと思うのか?」
「駄目―なのか?」
「当然だ。五年前、妓生になると〝家〟を飛びだ出したお前を止められなかっただけでも、お前の兄には負い目があるんだ。この上、お前にそんなことをさせたら、間違いなく明賢に殺される」
香月がフッと淋しげに笑った。
「大丈夫だよ。兄さんはもう死んでる。死んだ奴が兄貴を殺しにくることなんか、ありえないさ」
「質の悪い冗談は止めろ」
秀龍が露骨に顔をしかめると、香月は笑った。
「全く、兄貴は相変わらず、冗談の通じない人だなあ。そんな風に融通がきかないから、いつまで経っても、奥さんにヤラセて貰えないんだよ」
「お、おいっ。お前、また、春泉のことを」
秀龍はもう怒髪天を突き、香月の胸倉を掴まんばかりの勢いだ。
対する香月は笑いながら、しれっと言ってのける。
「兄貴、よおく言っとくけど、女は正攻法で攻めるだけじゃ、オチないよ? どうせ兄貴のことだから、〝好きだ、愛してる。だから、ヤラセてくれ〟とか何とか、直球勝負してるんだろ。じゃなくて、ちゃんと色々と手順を踏むんだよ。甘い科白を惜しげもなく囁きながら、ゆっくりと雰囲気を盛り上げていかなくちゃ。奥さんっていっても、まだ若い女の子なんだからね、夫婦っていうより恋人同士のような感じで、さりげなーく押し倒すんだ。良い? 性急すぎるのはモテない男の最大の原因だよ」
「大きなお世話だ!!」
秀龍は怒鳴った。部屋を出る時、わざと、部屋の引き戸を思いきり手荒く締めてやった。
「お前を犠牲にして得た金を、私が子どもたちのために使うと思うのか?」
「駄目―なのか?」
「当然だ。五年前、妓生になると〝家〟を飛びだ出したお前を止められなかっただけでも、お前の兄には負い目があるんだ。この上、お前にそんなことをさせたら、間違いなく明賢に殺される」
香月がフッと淋しげに笑った。
「大丈夫だよ。兄さんはもう死んでる。死んだ奴が兄貴を殺しにくることなんか、ありえないさ」
「質の悪い冗談は止めろ」
秀龍が露骨に顔をしかめると、香月は笑った。
「全く、兄貴は相変わらず、冗談の通じない人だなあ。そんな風に融通がきかないから、いつまで経っても、奥さんにヤラセて貰えないんだよ」
「お、おいっ。お前、また、春泉のことを」
秀龍はもう怒髪天を突き、香月の胸倉を掴まんばかりの勢いだ。
対する香月は笑いながら、しれっと言ってのける。
「兄貴、よおく言っとくけど、女は正攻法で攻めるだけじゃ、オチないよ? どうせ兄貴のことだから、〝好きだ、愛してる。だから、ヤラセてくれ〟とか何とか、直球勝負してるんだろ。じゃなくて、ちゃんと色々と手順を踏むんだよ。甘い科白を惜しげもなく囁きながら、ゆっくりと雰囲気を盛り上げていかなくちゃ。奥さんっていっても、まだ若い女の子なんだからね、夫婦っていうより恋人同士のような感じで、さりげなーく押し倒すんだ。良い? 性急すぎるのはモテない男の最大の原因だよ」
「大きなお世話だ!!」
秀龍は怒鳴った。部屋を出る時、わざと、部屋の引き戸を思いきり手荒く締めてやった。